某鬼の映画がめっちゃヒットしてる昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか?
自分は原作もアニメも触っていないため、無限の列車に乗車拒否されているわけですが。
とはいえ、前回「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を観に行ってからしばらく映画館に足を運んでいないので、ぼちぼち何か観に行きたいなーと思いつつも世の中こんな情勢なので本当に「観たい!」っていうものを厳選して観に行こうと思っていたところいい作品を見つけました。
それが「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ~ぼくが選ぶ未来~」でございます。
この作品は「中国アニメ映画」っていうめちゃくちゃ馴染みの無いジャンルなんだけど、字幕版が極僅かな上映館&上映期間ながら特にクリエイター系の方を中心にカルト的な人気を集め、そこから口コミで人気が広がって今年11月に日本語吹き替え版が公開されました。
かく言う自分もTwitterでフォローしている複数の好きなイラストレーターさんが推しているのをみて興味が出て今回映画館に足を運んだわけです。
ということで、熱狂的なファンの方が多い作品なのでちょっと恐縮だけど感想文を。
「中国アニメ」を意識しなくてもいいとっつきやすさ
「中国アニメ映画」って言うと「インド映画」みたいに普段主に見てる国産や欧米産の映画と異質なもののように感じるかもしれないけど、今作では日本との文化や慣習の違いみたいなものは殆ど感じないので予想以上にすっと入っていけます。
舞台はもちろん中国なんだけど、気がついたのは食事シーンに点心が多いこと、車が右側通行なこと、地下鉄のセキュリティが厳重なことくらい?
いきなり歌って踊ったりしないし、普通の人の服装や仕草、都会の町並み、田舎の風景や植生も日本と大きな違いがないので、変なところで引っかかることはないはず。
独特なタッチのキャラ塗りや、最近の国産アニメではあまり見られなくなったベタなアニメ的表現を除けばほとんど違和感を感じるところはないし、これもお国の違いっていうよりはこの監督・スタジオの特徴で収まる範疇ですね。
キャラクターデザインもクセがなく「中国アニメ」っていうカテゴリが自分に合うかわからないっていう心配は杞憂に終わること間違いなしなので、興味があるけどなんとなく足を運ぶ勇気が出ない人は是非観たほうがいいよ。
唯一難点だったのはキャラ名がみんな中国読みなのでサブキャラが覚え辛いことくらい。(いうて名前はメインの3人覚えればOK)
見どころは緻密な描写…ではなく大迫力異能バトル
この作品、メインビジュアルや映画サイトの情報だけだとなんとなく「雰囲気映画」みたいに思えるかもしれないけど、ホントのところは「大迫力異能バトル映画」、そう実質アベンジャーズ。
事前情報なしだと「ジブリを観に行ったら気づいたらアベンジャーズだった」っていう感想がしっくりくるくらいギャップがあります。
まぁタイトルも「~戦記」なのでバトルがあるのは予想つくわけですが、ここまでのものが観られるとは思わないでしょうよ。
公式サイトに「バトル編」っていう予告映像があるのでなんとなくのイメージは掴めるかもしれないけど、実際はこれの何倍もすごいからぜひ劇場で観てください。
スピーディーなバトルでも安定している作画・メリハリがあり爽快感の高い異能の演出・ダイナミックなカメラワーク、どれをとっても超一級品のバトルは多分100回繰り返して観れる。
こればっかりは自分の乏しい語彙力だと表現できないのでホント映画観て…。
とはいえメインビジュアル等から抱く雰囲気の良さもしっかりあり、優しいタッチの風景描写や丁寧に描かれた都会の町並み、鮮やかで神秘的な特殊演出などなど美しい描写もバッチリ押さえられているし、ちょっとした小物でも手を抜かない上質な作画は必見。
また、キャラクターの表情の描写が非常に丁寧で無言や空白からも感情がしっかり伝わってくるのがとても高ポイントです。
ただ、その分行間から感情を読み解くくらいの最低限の映画力は求められますが。
実力派本職声優の底力
この作品配給がANIPLEXなのでオタクたちの気持ちをよくわかっていらしゃって、変に芸能人声優を使ったりしていないのもオタク的には非常に高得点。(ごく一部だけ特別出演あるけど)
メインの3キャラはもちろん、あまり出番の多くないサブキャラの声優陣も豪華&実力派揃いで配役もドンピシャ。(参考:公式サイト)
特定の作品をあげることは差し控えるけど、やはりアニメ作品や吹き替えには本職声優さんのほうが安心しますわね。
さっきキャラクターの表情描写が丁寧って書いたけど、メインキャラの内2人があまり饒舌じゃないのに多くないセリフから内面やキャラクター性がしっかり伝わってくるのは映像だけでなく声優さんの名演あってのもので、職人芸といっていいレベル。
サブキャラクターの説明はやや言葉足らず
一方で詳しい事情は調べてないが制作スタジオは多分中小っぽく、映画の尺はやや短め(106分)。
また、もともとはFlashで作られたWebアニメが原作でこの映画はその前日譚に当たるようで、作品を100%楽しむには知っておくべき事前情報がやや多く、しかも映画以外は公式で日本語対応されていないのでファンサイトなどから情報を得る必要があるようです。
特に後半にかけて多数登場するキャラクターたちは様々な能力を持っていたり、デザインや立ち振る舞いもサブキャラクタと一括にするにはもったいない存在感があるのに、映画内だけではそこを補強する説明が不足していてやや残念。
もちろんインタビュー(中国語)やパンフレットなどで情報は保管されていると思うんですけど、事情を知らないと「単発作品を観に行ったつもりが、実は原作・続きものだった」弊害を(ほんのちょっぴり)受けなくもないかなーという印象。
ただ映画のストーリー自体は「シャオヘイ」「ムゲン」「フーシー」のメイン3人でほぼ完結するので、事前情報なしでも95%くらいの部分は普通に楽しめるし話についていけないということは全く無いです。
むしろ映画を観てから映画内ではあまり語られなかったキャラクターや背景の補完に原作に手を出してみるのもいいかもしれません。
中国語だけどな!
幅広い人におすすめできる王道エンターテイメント作品
ということでつらつらと書いてきましたが、とにかく「中国アニメ映画」っていう異色作品ながら日本人にも抵抗なく受け入れられそうな「羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~」。
今回は初めての視聴なのでとにかくアクションシーンの凄まじさにド肝を抜かれてしまったわけですが、キャラクターの心理を描写する丁寧な演出なんかは掘れば掘るほど出てきそうで、一口目からすごい旨味があるのに噛んでも噛んでも永遠に味の薄まらないスルメみたいなそんな作品でした。
そういえば全然触れてなかったけどストーリーはザ・王道。
小難しいことはなく、公式サイトのあらすじとか読んだだけでもカンがいい人ならなんとなく全体像がつかめると思いますが、それでも何回か観たくなる作品。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」もそうだけど、王道・ベタな作品でもここまで魅力的になるんだなーといういい例だと思う。
わかりやすいストーリー、迫力のバトル、丁寧な描写、作品特有の味といろいろな魅力のある作品なので、一般人からオタクまで、老若男女問わず楽しめる良い作品でございました。
キャラクターも親しみが持て話のテンポやメリハリもいいし、露出シーンや残虐シーンもないのでドラゴンボールとかプリキュアがわかるくらいのお子さんとなら家族連れでも十分に楽しめると思います。
でかでかとマス広告を打てばもっと興行成績上がるレベルの作品だとは思うんだけど、この作品を大手に汚されたくないな・・・って思ってしまうのもオタクのサガか・・・。
というわけで、この作品を広めて一般配給にまで持っていってくれた先人たちに感謝、ありがとうそしてありがとう。